プロローグ
二〇〇年ほど昔のこと。
世界は穏やかで平和な世が続いていた。戦争も革命も、なんの変化もない時が。
しかし、変化のない時はそう長くは続かない。所詮、微妙なバランスの上に成り立つ短い平穏であったのだ。
そんな時、一つの巨大な隕石が地表に落ちてきた。
それによって、さまざまな生物に変化が生じた。鳥にも、魚にも、馬にも、牛にも―――もちろん人間にも。
祈ることで傷病が治ったり、物を動かしたりという、未知の力。そう、それが魔法。
ただ、その力は人間だけでなく、それ以外の生き物にも与えられた。そう、それが悪魔。悪魔は、人間の魂を好む。
そのため、隕石は新たな思想をもたらした。隕石を神の啓示だと考える『神学』。
その思想は一つの宗教となっていくが、未知の力が次第に聖なる力と邪まな力の二つに分けられることによって、二つの宗教へと変化していく。
邪まな力を持つと虐げられた者たちは一つの集団へとまとめられていく。
―――それが『ウィザード協会』である。
同時に、聖なる力を持つと崇められた者たちは、『ウィザード協会』に対抗するためにある組織を作った。
―――それが『聖教会』である。
二つの勢力は互いに影響しあいながら、強大なものになっていった。
再び変化が訪れたのはそれから一〇〇年後だった。
一時はあふれるほどいた能力者が一人もいなくなってしまったのだ。
突然の変化に、それぞれの組織は混乱したが、能力者がいなくなったことを隠遁して対立し続けた。
時は流れ、能力者が現れ始めたのは七十年後であった。
聖教会の子孫として誕生したその子供は、『ファウスト』と名づけられ、左腕にTの紋章を持っていた。
同時に聖教会とウィザード協会の聖女が託宣を下した。
力を持つ者は腕にTから]Vの紋章を抱き、生まれてくるだろう。
そして、訪れる最後の審判から、人々を救ってくれるだろう。
その託宣は一般の人々にも伝わり、腕に紋章を刻まれた者たちを<神の使徒>と呼んで崇めた。
そして、現代。
リアルト王国・カンディア。
その小さな村に、Wの紋章を持つ「フィア」という名の少女がいた。
誰よりも強大な力を持つ彼女は、同じく腕に紋章を持つ兄と二人で平凡な毎日を送っていた。
全ての始まりは彼女の魔力の暴走だった。その魔力は家を飲み込み、村を飲み込み、森を飲み込んだ。
これによって、彼の大切な人は死へと追いやられてしまう。最初、妹に向けられていた彼の憎しみは、次第に世界へと向けられていく。
それが、終焉の戦いの幕開けだった。
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