プロローグ
そこは戦場だった。怒号が乱れ飛び、剣の交わされる音、銃が撃たれる音、馬の足音が響く。
剣に首を切られ、銃弾に心臓をえぐられ、毒矢が眼球に突き刺さり、馬に轢き潰され、爆弾に四肢を引きちぎられ。数多の兵士が殺し合い殺されていく現実が横たわっていた。
そんな場所には不似合いな茶色の髪をなびかせて、哭いている女性。地面に座り込む彼女の前には眠るように目を閉じた青年が横たわる。
彼女の脇には不似合いな大きな剣が地面に突き刺さっている。彼女はそれを片手で引き抜いて、そして、嗤った。
「わかっていたのよ。私が大切にしている人ほど死んでいくことが」
鎧は元の色が分からなくなるぐらいに血塗られ、それが凝固し、赤黒くなっている。大剣にも同様に、血がこびりついている。
「―――だって、死神、ですもの」
彼女は楽しそうに悲しそうに微笑んだ。
はじまりは胡蝶。
赤き蝶が舞う。
狂喜乱舞のように、狂気乱舞のように
咲き誇る青い花を引き裂いていく。
次第に赤き蝶は増える。
憎しみと悲しみと死の歴史が
今二度ここに綴られる。
ならば
拳銃を構え、引き金を引け。
大剣を構え、粉砕しろ。
血を流し、血を流させ、自分を紅に染めよう。
涙を流し、涙を流させ、自分を闇に染めよう。
咲くならばより血塗れた赤い花を
咲くならばより大輪の赤い花を
自分の体に咲かせてみよう。
誰も知らない"死神"の人生の一部が
はじまる。
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