プロローグ
荒野に風が吹いた。その風は裸になった地面を撫でて、遠くへと吹いていく。
その地面には何も生えていない。まさに、荒野。
そう、死体。それも、兵士の死体ばかり。
そんな場所に、突然白銀の髪がなびく。長くて艶やかな白銀の髪。
その持ち主は、この場所と不似合いな少女だった。それだけであれば、近辺の村の少女だと思うだろう。
ただ、少女の両手は真っ赤な血で彩られていた。
そう、少女はここにいた兵士を全て殺したのだ。慈悲も手加減も何もなく、それに悲しみや怒りを感じることもなく。
ただ淡々と流れ作業をするかのように、剣を振るい、首を刈る。
その剣が使えなくなると、素手で心臓を抉り出す。
心臓は、少女の手の中でぴくぴくっと動いた。少女はためらいもなく、それを握りつぶした。
そうして、少女の手が血に染まっていったのだ。
だが、少女の顔や白い服は、一切血に濡れてはいない。
少女は疲れたのか、その場所に座り込んだ。
「撃退完了。撃退システムを停止し、回復システムを起動します」
そう呟くと、瞳を閉じてそのまま動かなくなった。
そのころ、少女から遠く離れた場所で、
「第二軍は撃破されました」
男は―――軍人だろうか、そう言って敬礼した。
「中尉、あれを」
中尉と呼ばれた男の上司にあたる男が、有無を言わさぬ口調でそう言った。
黒い髪に黒い瞳。軍人というよりは貴族と言ったほうが通じそうな容貌。
かといって、ひ弱な印象も受けない、不思議な男。
「はい」
中尉と呼ばれた男は垂れ幕の外に出ると、大きな声でこう叫んだ。
「殺人兵器、撃破開始!」
その声とともに、大きな鉄の塊が火を噴く。それは少女のいる場所に向かって放たれていた。
● next