「やばい! 遅刻だ! 海、行ってくる!」


 自分の部屋から出てきた空は、慌てて靴を履いて飛び出していく。


「はいはい、いってらっしゃい」


 そう言って空を送り出した海の表情は、何とも言えない表情だった。





 幸せな一日






  「ごめん、待った?」


「うん」


「えっ! ほんとごめん」


 そんな空の慌てた様子に貴京はくすっと笑った。


「これでおあいこだから。行こう」


 今日は一月一日。元日だ。

 空と貴京は初詣でにあの神社に来ていた。そう、あの夜景がとても綺麗なあの神社。

 この日はやはり元日だからか、この寂れた神社にも出店が出て、多くの人で賑わっている。


「すごい人だね」


 空はうん、そうだねと言って、貴京の手を握り、歩き始めた。いつもとはちょっと違う空にドキッとしたのか、貴京の顔が心なし赤い。


「行こう」


 賑わう人混みの中、空は貴京の手を引き長い階段を登る。

 降りてくる人と登る人がぶつかり合っているのか、人混みは遅々として進まない。

「貴京、こっち」


 空は貴京の手を引き、階段の脇にそれる。


「なに?」


「少しずるしよう」


 そう言って空が指差した先にあったのは、現在はあまり使われていないような階段だった。







「うん、早かった」


 あれから五分後には、もう頂上についていた。ただし、裏に。


「正面は混んでるね。……混んでるところよりも、二人でいられる方がいいし」


 貴京は空に微笑みかけた。そして目を閉じる。空もそれに倣って目を閉じる。

 神社の裏で、お賽銭もあげていないけど―――来年も貴京と一緒にいられますように。

 二人は笑顔で新たな年の空を見上げた。







 The end.



 モドル



*あとがき

“貴京は空に微笑みかけた。そして目を閉じる。”

このシーンね。読む方誰もが、何でキスしないんだよ、って思うでしょう(笑)

最初はキスシーンでも作ろーかと思ったんですけどね。

無理でした……(笑)

貴京は動くんだけど、空がうまく動いてくれなくて……

ん? なんだ空? そんな目で睨みつけるなよ。

本編で死んだこと、恨んでいるのか?

……うわぁ!やめろ!(死)

(笑)