思い出の場所
今は夜。
冷たい風が落ち葉をさらい、カサカサという音を立てる。
季節は冬。
家から出たくない日々が続く。
そんな中、貴京は走っていた。待ち合わせに遅れそうなのだ。
待ち合わせ場所である駅前のベンチに向かってぐんぐん走る。
「ごめん。遅くなって」
「いや、いいよ」
ベンチに座った少年―――空は笑顔で答えた。
「よくない。こんなに手が冷たくなってる」
貴京は空の手を取ると握った。
「ありがとう」
貴京は顔を赤くして、そっぽを向いた。その様子を見た空はくすっと笑った。
「今日は貴京に見せたいものがあるんだ」
そう言って空は貴京の手を引いて、賑やかな方とは反対の方へ連れて行く。
「ここ……」
貴京は鳥居を見上げる。
そこは高台にある神社だ。何段あるのかわからないが長い階段が続いている。途中にはお年寄りのためか木のベンチまで設置されている。
だが、あまり利用されていないようだ。
「ここ登るの?」
「すごい穴場なんだ」
そう言って、空は登って行く。
その後を慌てて貴京は追いかけた。
貴京は、はぁっと荒い息を吐く。ようやく長い階段を登りきった。
「貴京、平気?」
「……うん」
こっち、という空の声に貴京はゆっくりとついて行く。
「ぅわぁ!!」
貴京の目の前には住み慣れた町が広がっていた。
大きなイルミネーション―――そう、夜景である。
「ここ、一人になりたいときとか、よく来ていたんだ。この町が自分一人のものに感じられて気持ちいいんだ」
貴京は空に抱きついた。
「ぅわ……ぁ……」
空は顔を赤くした。
「あ、雪……」
貴京の視線の先には白い羽のようにひらひらと舞う雪。
その雪はまるで貴京と空の中を祝福しているかのようだった。
The end.
モドル