はろうぃん
「今日は何の日ですか」
突然、Lがそう言った。
十月の終わり。そろそろ人間にとって風が冷たくなってくる季節だ。
(オレは感じないけど)
今日。
勿論、ライトの誕生日でもないし、Lの誕生日でもないだろう。
(オレのは知らないけど)
「今の時期だったら、味覚の秋とか食欲の秋なんだけど。竜崎にぴったりだろ?」
「月くんは私をどういう人だと思ってるんですか……。今日は『はろうぃん』ですよ」
Lが溜め息を吐きながら言った。さも、がっかりしたというように。
オレはリューク。死神だ。
「ああ。けれど、日本ではそう大切な行事じゃないぞ?」
「私にとっては大事です」
言えてる。
俺が知っている限り、Lはお菓子が大好きだ。というよりは甘いもの全般。
よくあれで、病気にならないものだ。
(ちなみにオレの好物はリンゴだ。リンゴ食いたいなぁ〜)
しかし、Lがただでお菓子をもらって喜ぶだろうか。
世界の探偵であるLがお金に苦労するわけなどないだろうし。
(オレにはお金の価値なんてわからないけど)
「大学生になってそんなことする奴はいないだろう?」
「ここにいます」
有無を言わせぬ言葉。
「アレは子供がやるものだ」
「学生は社会人ではありません。つまり、子供です」
(……こいつら学校行ってたか?)
ライトは溜め息を吐いて、
「わかったよハロウィンをやればいいんだろ」
「勿論、今夜やりますよ。ミサミサにも言っておいてくださいね」
衣装は各自で用意しておいてくださいね、と付け加えた。
これだから、Lとライトはオモシロ!
そして、時は移ろい、時刻は十時。まさにぴったりな時間だ。
(そうLが言ってた)
ガチャっと、扉の開く音とともに黒いマントを羽織ったミサミサが飛び込んできた。
「ライト、会いたかったよ〜」
「あ、ああ」
ライトは自分に抱きついてきたミサミサを体から引き離した。
(演技してるライトもオモシロだけど、こっちのライトもオモシロ)
「竜崎は〜?」
「今、着替えている」
ライトは自分の腕の鎖をしました。その鎖は細く開いた扉の向こうへと消えていた。
オレはライトとミサミサの真上へ移動した。
「ライトは何の仮装したの?」
「後で教えるよ」
「え〜、いじわる〜」
「ええ、月くんは意地悪です」
やはり黒いマントを羽織った竜崎が言った。
(上から見ても、どんな仮装してるかわからねぇ〜)
「はぁ〜。それはともかく、さっさと行こう」
ライトはため息をつきながら扉へ向かう。
「何言ってるんですか。まだやるべきことをやってませんよ。何のために、黒いマントを用意したというのです」
「はいは〜い。ミサわかるよ。何の仮装してるかわからなくするためでしょ?」
なるほど、納得する答えだ。
「当たりです。ではまず、月くんから披露してください」
いつのまにか、Lとミサミサがベッドに腰掛けて、ライトに拍手を送っていた。
便乗して、オレもベッドに座る。
その二人の様子に(勿論オレは見えないし)あきらめたようにため息をついて、マントの前を開く。
「吸血鬼だ」
「わぁ、月かっこいい!私の血ならいくらでも〜、なんちゃって」
ミサミサはライトに抱きついた。
(ほんとに抱きつくの好きだな)
「衣装はどうやって手に入れたんです?」
「自作しかないだろう」
「なるほど、昼間作ってたのはこれだったんですか」
(そういえばなんか作ってた)
「次はミサね」
ミサはそういってすくっと立つと、マントを脱いだ。
「じゃーん。悪魔で〜す」
ミサの頭は黒い触角(?)がついていて、お尻にもしっぽがついている。黒い羽も背中についている。
全身黒で固めたセクシースタイル。のつもりらしい。
「ミサミサ、かわいいです」
「ライトはど〜ぉ?」
「あ、ああ。いいんじゃないか」
(ふーん)
「では最後に私が」
そう言ってLがマントに手をかける。
頭には黒の三角帽子。(どっから出したんだよ)
手には箒。(どっから……)
そしてくるりと回る。
「魔女です♪」
「竜崎、かわいい〜」
「月くん、どうですか」
「……う、ああ、いいんじゃないか……」
(効果音つけるとしたらキラキラだな)
それじゃあ行きましょう、と言って三人は部屋を出て行った。
ライトはげっそりしていた。
(まぁ、気持ちもわからないでもないな)
「Trick or treat!」
そうLとミサミサ(オレも)が言って戸をたたいたのは松田の部屋だ。
扉は開いたが、そこにいたのは松田ではなかった。そうお化け。
「ライト〜、怖い〜」
ミサミサがライトに抱きついた。(ほんと好きだな)
「松田さん、何やってるんです?」
「あ、ばれた?」
「ばればれです」
松田はシーツを取った。
「えーと、お菓子ですよね」
松田はさまざまなお菓子が入っている袋を三つ持ってきて、三人に渡した。
(リンゴ食いて〜)
「月くん、松田さんに教えましたね?」
「しょうがないだろう。自分で衣装を用意しなきゃいけなかったんだから」
布地だけ買ってきてもらったんだよ、と続けた。
「松田さん、来年も楽しみにしてます」
(来年も、ここにいる気かよ)
松田はため息をつくと、おやすみなさいと言って、部屋の中へ戻った。
「次は……」
「みんな自宅だろ」
「じゃぁ、おしまい?え〜、つまんない」
「行きましょう、夜神さんの家へ」
「おい、それだけはやめろ!」
「行こうよ!楽しそうだよ」
「その格好で外を出るのだけはやめてくれ!」
そうして、夜も更けていく。
(ほんとオモシロ!)
おしまい
モドル